検定に合格する確率を数学で考える~その4~

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前回の投稿はこちら

今回は、「各技の合格率と、技1回あたりの成功率の関係」についてお話しします

練習で10回中5回できる技を、本番で10回中3回成功させられる確率は?

  以下の実力の人がいたとします。

ふりけんは10回中5回くらいは平均してできる!

 さて問題です。この人が10回中3回ふりけんを成功させられる確率はどのくらいでしょうか?

※最初に断っておきますが、「練習時の成功確率と、本番時の成功確率は同じである」とします。本番の際は緊張して成功率が下がると思いますが、今回はそれを考慮しません。

100%!と言いたいところですが、そんなことはありません。10回中5回できる人でも、10回中2回しかできないこともあれば、10回中8回できることもありますよね。

それは人間的にとらえれば「調子や運が良い時と悪い時がある。」と説明できます。

一方で、数学的に考えると、10回中2回できることもあれば10回中8回できることもあるのは、「けん玉の成功回数が二項分布(にこうぶんぷ)に従っている(*1)から」と言えます。

「コインを投げたときに表が出るか裏が出るか」のように、何かを行ったときに起こる結果が2つしかない試行のことを「ベルヌーイ試行」といいます。
(中略)
このベルヌーイ試行をn回行って、成功する回数Xが従う確率分布を「二項分布」といいます。

13-1. 二項分布 | 統計学の時間 | 統計WEB

何が何だか難しい概念が入ってきましたが、大したことはありません。下で簡単に説明します。
※二項分布は大学レベル(?)の知識なので、言葉を覚える必要はありません。

二項分布(にこうぶんぷ)って…?

先ほど挙げた例を使います。

・ふりけんは10回中5回くらいは平均してできる!

この人は、いつも10回中5回ふりけんができるとは限らないですよね。
 ・5回できる!(これが一番ありそう)
 ・4回か6回できる!(これもそこそこありそう)
 ・3回か7回できる!(これも少しならありそう)
  …
 ・0回…(相当運が悪ければありそう…)
 ・10回!(相当運が良ければありそう!)

という感じになるのは、直感的にわかると思います。

ちなみに、10回中5回ふりけんができるということは、2回に1回できるということです。確率で言ったら50%。これはちょうど、

 コインを投げて表が出る確率

と同じですね。10回コインを投げて全部表!ということは相当珍しいです。
どのくらい珍しいかというと、1回ごとの確率を掛け算することで求めることができましたね。50%(2分の1)を10回連続ですから、

$$\frac{1}{2}\times\frac{1}{2}\times\frac{1}{2}\times\frac{1}{2}\times\frac{1}{2}\times\frac{1}{2}\times\frac{1}{2}\times\frac{1}{2}\times\frac{1}{2}\times\frac{1}{2} = \frac{1}{1024}$$

です。1000回に1回くらいです(10回コインを投げて全部裏も同じです)。

非常に低確率であるものの、ないわけではないですよね。

同様の計算で、10回中○回成功する確率がそれぞれどのくらいかを求めることができます(詳しい計算は省略します)。
※それぞれの確率がどれほどなのかを表したものを確率分布といいます(名前は覚えなくていいです)。

成功確率が50%の人が、10回試行した場合の確率分布

成功確率が50%の人が、10回やると何回成功できるかを表にしたものが↑です。

10回中5回が最も確率が高いものの、24.6%ですから大体4回に1回くらいですね。
残りの4回に3回くらいは、0~4回、もしくは6~10回です。

 上の表を棒グラフで表すと、下図のようになります。

成功確率が50%の場合は、このように成功回数5回を頂点とした、きれいな(左右対称の)山なりのグラフになります。

それでは、成功確率が80%の場合はどうなるでしょうか。

成功確率が80%の人が、10回試行した場合の確率分布

8回成功が最も多く、次に8回の近くの9回や7回が多いのがわかりますね。
こちらも棒グラフで表します。

【参考】成功確率が10~98%の人が、10回試行した場合の確率分布

ご参考として、成功確率が10%~90%(10%ごと)、95%,97%,98%の人が、10回試行した場合の確率分布の表を載せておきます。

本題:10回中5回ふりけんできる人が、10回中3回ふりけんを成功させられる確率は?

最初に出した問題をおさらいします。

以下の実力の人がいたとします。

ふりけんは10回中5回くらいは平均してできる!

さて問題です。この人が10回中3回ふりけんを成功させられる確率はどのくらいでしょうか? 

先ほどの棒グラフを元に考えましょう。10回中5回成功させられる=50%の確率で成功させられる場合の、10回試行した場合の確率分布は以下の通りでした。

 10回中3回成功させるには、もちろん成功回数が3回以上である必要があります。つまり、

 このような感じで、オレンジ色のところならば10回中3回をクリアすることができます。その確率は、各成功回数の確率を足していけばよいので、

 オレンジ色のところをすべて足して、
11.7 + 20.5 + 4.4 + 11.7 + 20.5 + … + 0.1
= 94.5%となります。

なので答えは、

10回中5回ふりけんを成功させられる人は、94.5%の確率で、10回中3回ふりけんを成功させられる。

*1
二項分布は、「毎回の試行において成功の確率は一定である」という前提を置いています。
この前提を置かないと確率が計算できないためです。
ただ、実際の検定の際は、そんなことないですよね。最初(1回目)と最後(10回目、もしくは失敗すると検定に不合格になる場合)の成功確率は低いと思います。
1種目目の最初(1回目)は緊張していますし、2種目目以降の最初(1回目)も、新しい技をやることになるので、他に比べると成功確率は低いでしょう。
そして最後(10回目、もしくは失敗すると検定に不合格になる場合)も、やはり緊張で成功確率が低くなると思います。なので、実際はすべての試行において成功確率が同じ、という機械のようなことはあり得ません。
しかし、今回はおおよその確率を計算することが目的なので、二項分布の前提である「毎回の試行において、成功の確率は一定である」という前提を採用しています。

次回は、六段に合格する超上級者がどのくらいの確率で技を成功させられるかを整理します。