検定に合格する確率を数学で考える~その5~

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今回は、検定試験に合格できる人が、どのくらいの確率で技を成功できるかを数学で考えることにします。
数学がまだわからないよ、苦手だよ、という人にも感覚で伝わるようにしているので、ぜひご覧ください。

参考として、以下のページを載せておきます。

今回もいきなり例題!

今回も、いきなりですが例題を出します。

六段の試験に80%の確率で合格できる人は、宇宙一周の各動作何%の精度で成功できるでしょうか?

この例題と同じことを、少しだけ簡単に表現すると以下のとおりです。

六段の試験を100回受けたら80回合格できる人がいます。この人が、宇宙一周のなかで出てくる「中皿~けん」を成功できるのは、100回中何回でしょう?

このような感じです。問題をただしく理解するために、黄色くぬりつぶされた文字の説明をします。

六段

六段は、日本けん玉協会が認定する段位の中で、「実力で取得できる段位の中で、最高の段位」です。
六段の認定試験を受験するには、
・五段を取得してから1年以上経過していること
・20歳以上であること

の2つが条件となります。
・受検するための条件が難しい
・多くの認定員が必要なので、主要な大会でしか六段の認定試験が開催されない
・受検料がかかる
・求められる精度が非常に高い

などの理由から受ける人が少ない段位です。また、合格者数も1年間で2人のような年もあり、非常に取得するのが難しい段位です。

段位を持っていない方は、「とにかくめっちゃムズイんだなあ」と思ってくれればそれでOKです。

※ちなみに日本けん玉協会は十段まで段位があります。先ほどお話ししたとおり、実力で取得できるのは六段までで、七段~十段まではいわゆる「名誉段位」です。けん玉協会の理事の方や、けん玉界に多大な貢献をされた高段位の方が七段~十段の資格を得ます。
つまり、実力以外の成果が必要です。
言い方を変えれば、最もけん玉の実力があるのは若い五段や六段の方です。
(七段~十段の方が下手だと言っているのではなく、九段や十段だから、五段や六段より強いわけではない、という意味です)

六段の認定試験においては、以下の技をクリアする必要があります。

自由種目…内容は六段としての技量を示す技を行うこと。具体的には、高度な技術を示す技、オリジナルな技等、構成は自由。ただし、2種目を各10回以内で試技を行うこと。日本けん玉協会のHPより引用)

六段の認定試験においては、合計13つの種目をすべてクリアする必要があります。

級位の技は多くとも3つですから、非常に種目数は多いですね。

仮にすべての技をノーミスで成功できたとしても、67回の試技を行う必要があり、体力・集中力も求められます。

80%の確率で合格(100回受けたら80回合格できる)

六段の試験を80%の確率で合格できるのは簡単に言えば、ヤバいです笑
めちゃめちゃ上手い人でも、なかなか80%の確率で合格となると厳しいですね。この辺りの考え方については以下のページで紹介しています。

80%というのは、100回に80回、10回に8回、5回に4回です。

ポケモンの技でいうと、『ハイドロポンプ』が当たる(命中する)確率ですね。私はハイドロポンプは良くはずれる印象しかないのですが…、いずれにせよ80%は高い確率です。

宇宙一周の各動作(宇宙一周の中の「中皿~けん」)

宇宙一周は、六段の認定試験の最初に登場する技です。

けん先(=とんぼ)~けん~小皿(大皿)~けん~大皿(小皿)~けん~中皿~けん
で完成です。言葉だけだとわかりづらいので、動画ものせておきます。

簡単そうにやっていますが、非常に難しい技の一つです。

宇宙一周は以下の8つの技に分解できます。

※途中の小皿と大皿は逆でもOK

ですから、「宇宙一周を成功させる」イコール「この8つの技を連続で成功させる」です。
この章のタイトルになっている、「各動作」は、「8つの技のうちの1つ」という意味です。
また、「中皿~けん」も同じように「8つの技のうちの1つ(⑧)」ですね。

六段の認定試験では、この8つの技を連続で成功させる必要のある宇宙一周を、10回中8回成功させる必要があります。
大変ですね。10回中2回しかミスすることができないので、非常にきびしい条件です。

まあ六段の認定試験で一番簡単な技のうちのひとつなので、そうも言ってられないのですが…

例題って結局なんだっけ?

例題のそれぞれの言葉を説明したところで、例題に戻ります。

六段の試験に80%の確率で合格できる人は、宇宙一周の各動作何%の精度で成功できるでしょうか?

もしくは、

六段の試験を100回受けたら80回合格できる人がいます。この人が、宇宙一周のなかで出てくる「中皿~けん」を成功できるのは、100回中何回でしょう?

でしたね。

①13つある六段の認定試験の種目をすべてクリアできる人がいる。その可能性は80%(100回に80回)

②13つある種目のうちのひとつ、宇宙一周は8つの技を連続で成功させる必要がある。

③その8つの技の各動作(例えば中皿~けん)は、どのくらい成功できればいいの?

という問いです。これを真面目に数学で解きましょう、というのがこのページのねらいです。

答えを言う前に…

もし自分で計算してみたい!という方は、すぐ下に答えが書いてあるので、ここでスクロールをやめて考えてみてください。

自分で計算はしないけど、「大体△△回中○○回成功できればいいかな」なんて予想してみたい方も、ここでスクロールをやめて考えてみてください。あてずっぽうで構いません。

と言いつつも、せっかくなので選択肢にします。

六段の試験を100回受けたら80回合格できる人がいます。この人が、宇宙一周のなかで出てくる「中皿~けん」を成功できるのは、100回中何回でしょう?

(A)100回に90.3回
(B)100回に93.3回
(C)100回に96.3回
(D)100回に99.3回

答えは、、、もう少し下に書きます。

答え

六段の試験に80%の確率で合格できる人は、宇宙一周の各動作何%の精度で成功できるでしょうか?

答え:99.26%

六段の試験を100回受けたら80回合格できる人がいます。この人が、宇宙一周のなかで出てくる「中皿~けん」を成功できるのは、100回中何回でしょう?

(A)100回に90.3回
(B)100回に93.3回
(C)100回に96.3回

(D)100回に99.3回 ←正解!!!

答えから言えること

真面目に数学で解く前に、そんなもの興味のない方のために答えから言えることを述べます。

答えは99.26%。約993/1000。つまり、

六段の認定試験に80%の確率で合格できる人は、宇宙一周の中の「中皿~けん」を1000回やっても7回くらいしかミスしない。

ということです。100回やったら1回ミスするかどうかのレベルです。
もちろん、これは数学上の数字であるし、いろいろな前提を置いたうえでの値です。

実際に六段の認定試験に80%の確率で合格できる人をつれてきて、「中皿~けん」を1000回やってもらったら7回しかミスしない、ということは珍しいと思います。疲れてしまうので。

ただ、数学上は99.26%という数字が導かれます。
仮にこの数字が数学上の値であったとしても、それくらい六段の人(実力で六段をとった人)はスゴいということです。

極限まで精度を高めた状態でないと、六段の試験には合格できないということです。細かい計算を理解する必要は全くありませんが、「六段はスゴい!」。それだけは覚えておきましょう。

それでは、確率の計算に入ります。興味のない方はここでやめてもらっても大丈夫です。

高校生で数学Ⅱ・Bを習っていれば大体の内容は理解できます。
※数学Ⅱで出てくる指数・対数、および数学Bの数列で出てくるΣ(シグマ)記号を使います。
※確率のところで「二項分布」が出てきます。こちらは大学レベルの知識になってしまいます。
 ただ、確率の得意な人なら、「二項分布」は調べれば理解できる程度の知識です
 二項分布は以下のページで解説していますので、参考にしてみてください。

確率の計算

問題:六段の試験に80%の確率で合格できる人は、宇宙一周の各動作を何%の精度で成功できるでしょうか?

前提①:六段の種目数は13つ
前提②:13つの種目をすべて合格する必要がある(1種目でも不合格があってはならない)
前提③:宇宙一周は10回の試技のうち、8回成功させる必要がある
前提④:宇宙一周は8つの各動作を連続で成功させる必要がある

仮定①:すべての種目の”合格確率”は同じ(技1回1回の”成功確率”ではないことに注意)
仮定②:宇宙一周の各動作の”成功確率”は同じ(たとえば “大皿~けん” と “中皿~けん” の成功確率は同じ)
仮定③:宇宙一周の成功確率の分布は二項分布に従う

六段の試験に合格する確率を、p とする。
各種目の合格確率を、q とする。
宇宙一周の1回あたりの成功確率をr とする。
今回求めるべき宇宙一周の各動作の成功確率をs とする。

(A)六段の試験に合格する確率p

前提①、前提②、仮定①より、
六段の試験に合格する確率p は、

pq を13回かけ合わせたもの、という意味です。

(B)宇宙一周を10回中8回以上成功させられる確率q

前提③、仮定③より、
宇宙一周を10回中8回以上成功させられる確率q は、

宇宙一周を10回中8回、10回中9回、10回中10回成功できる確率を、
足しています。

(C)宇宙一周を成功させられる確率r

前提④、仮定②より、
『宇宙一周』を成功させられる確率r は、

rs を8回かけ合わせたもの、という意味です。

A,B,Cを用いてpを求める

(A)、(B)、(C)の結果より、
六段に合格する確率p は、

今回は、六段に合格する確率p が80%=0.8であるので、

左辺と右辺は入れ替えました。

両辺の常用対数をとると、

を満たす、sを求めればよいことになります。

だいぶ皆さんを置き去りにしてしまったと思いますが、、

この式のs の値が、0.9926=99.26%になります。

ちなみにこのsの値を用いると、
『宇宙一周』を成功させられる確率r = 94.2%
『宇宙一周』を10回中8回以上成功させられる確率q = 98.3%

となります。

まとめ

今回は六段の試験に合格する確率をテーマに、数学上のアプローチを試みました。

99%以上!という結果が得られました。この結果は「六段はめちゃめちゃすごい」という印象を与えるうえで効果的である一方、いろいろな前提や仮定を置いているので、実際にそのくらいの確率でできるのか、というのは別問題です。

ある意味、数学の限界でもあります。
しかしながら、こうやって「どのくらいかな?」と考えてみたり、実際に求めてみたりすること自体に価値があると思いますし、けん玉の実力をはかるのに、数学は最適な道具です。

高校数学をしっかりと勉強していないと理解できないので難しいと思いますが、「けん玉にもこうやって数学が使えるんだな~」と感じてくれれば、私としてはうれしいです。

99%以上!という数字は正直どうでもよくて、(笑)、無意味に思える勉強も役に立つ日が来るのかも、と思ってもらえることがベストだと思います。

例題では「最も難しい」六段を扱いましたが、この考え方は他の段位でももちろん利用できます。

他の段位であれば99.26%といった非常に高い確率は出てこないと思いますが、もしチャレンジしてみたい方は、上の計算を参考にチャレンジしてみてください。

※指数や対数を扱うため、Excel(エクセル)や関数電卓を使いこなす必要があります。無理しない範囲で…