けん玉検定合格の可能性を、数学的に考察する~統計学編~

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今日は、けん玉検定合格の可能性を統計学を利用して数学的に考察する、というテーマを取りあつかいたいと思います。
【注意】小学生や中学生の方にとっては難しい内容です。数学が得意な高校生は理解しやすいかもしれません。いずれにしてもまとめはわかりやすくするので、興味のある方は見ていってください。
また、このページよりもかんたんな内容で数学的なアプローチをしているページもございますので、そちらもあわせてご覧ください。

※統計学(とうけいがく)とは、数字をあつかう分野です。数字や数値の集まりから、どのような性質があるの?であったり、どんなことが言えるの?ということを分析します。

ちなみに記事の後半では、「安定している人」はどういう特徴があるのか?ということをお話ししています。こちらは数学の知識がなくても理解できる内容ですので、ぜひ読んでいってくださいね。

いきなり例題

準初段の一種目目はとめけんです。とめけんは10回中5回成功させる必要があります。
たろう君、はなこさんはとめけんの練習を毎日10回、10日間続け、以下のとおり成功できています。
とめけんをクリアできる(10回中5回成功できる)可能性が高いのは、たろう君、はなこのどちらでしょう?
※本番では練習と同様の実力を発揮できるものとします。

〇:5回以上(なのでクリア) ×:5回以下(なのでダメ…)

※表の一番下にある「平均」とは、「1回あたり大体どのくらいできるか」を表します。

上の表からどんなことが言えるでしょうか。皆さん下を読む前に考えてみてください。

たろう君

たろう君の結果からは、以下のようなことが言えそうです。
・10回全部できることがある
・1回しかできないときがある
→できるときもあれば、全然できないときもある(あまり安定していない)
・10日間のうち、8日間はクリア(合格)
・10日間のうち、2日間はダメ(不合格)
・10日間の合計で、100回中60回は成功できる
・平均すると、10回中6回は成功できる

はなこさん

はなこさんの結果からは、以下のようなことが言えそうです。
・最高で6回できる
・最低でも4回できる
→できるときとできないときの差が小さい(安定している)
・10日間のうち、8日間はクリア(合格)
・10日間のうち、2日間はダメ(不合格)
・10日間の合計で、100回中55回は成功できる
・平均すると、10回中5.5回は成功できる

ふたりを比べてみると…?

ふたりの結果を比べてみると、以下のようなことが言えそうです。
・10日間のうち、クリアした日数は同じ(8日)
・10日間のうち、ダメだった日数も同じ(2日)
・100回のうち成功できた回数はたろう君のほうが多い(たろう君は60回、はなこさんは55回)
・平均するとたろう君のほうがとめけんの成功率が高い(たろう君は6回、はなこさんは5.5回)

さて、問題に戻りましょう。

とめけんをクリアできる(10回中5回成功できる)可能性が高いのは、たろう君、はなこのどちらでしょう?

10日間の練習のうち、クリアした回数はふたりとも8回なので同じくらいでしょうか?
平均はたろう君のほうが0.5回大きいので、単純に考えるとたろう君のほうがクリアできると考える方もいらっしゃいそうです。

しかしながら、統計学は別の答えを導きます。

とめけんをクリアできる可能性が高いのは?

とめけんをクリアできる可能性が高いのは、

たろう君 < はなこさん
62%  73%

となります。
平均の成功数では負けていたはなこさんのほうが、クリアできる可能性が高いという結果になりました。
なぜこういう結果になるかというと、たろう君のほうが”バラつき”が大きく、はなこさんのほうが”バラつき”が小さいからです。少し難しい話になりますが、グラフで表現します。

10回中〇〇回成功できた日が何日あったかを積み上げたグラフを示します。

例えば、たろう君は10回中1回できた日が2日間あったので、1のところの回数が2になっています。
はなこさんは10回中6回できた日が7日間あったので、6のところの回数が7になっています。

たろう君のグラフ(青色)は、1回、5回、6回、10回のところにあって、左から右までバラバラにありますね。
一方で、はなこさんのグラフ(オレンジ色)は、4回、5回、6回のところに集中しています。バラバラではなく、まとまっていますね。

青色のたろう君のグラフのように、バラバラになっている様子を、統計学では「”バラつき”が大きい」と言います。
※専門用語を使うと、標準偏差(ひょうじゅんへんさ)が大きいと言います。

オレンジ色のはなこさんのグラフのように、まとまっている様子を、統計学では「”バラつき”が小さい」と言います。
※専門用語を使うと、標準偏差(ひょうじゅんへんさ)が小さいと言います。

問題では、「とめけんをクリアできる可能性」つまり、「10回中5回以上成功できる可能性」を考えました。それを求めるときには、普段の練習のときの成功回数だけではなく、その成功回数のバラつき、標準偏差が重要になります。

バラつきが大きいと10回中5回成功できる可能性は低くなる。

それぞれの成功回数がどのくらい出やすいかを、たろう君とはなこさんの例で考えてみたいと思います。

たろう君

たろう君の、「それぞれの成功回数がどのくらい出やすいか」を表したグラフを以下に示します。

「確率(かくりつ)という言葉が難しくてわからない!」という方もいらっしゃると思います。
簡単に言えば、「どれくらい出やすいか」です。
100%なら100回中100回出る、ということです。20%なら、100回中20回出る、ということです。
100%と20%なら、もちろん100%のほうが出やすいので、「100%のほうが20%よりも確率が”高い”」と言います。

たろう君のグラフに戻りましょう。例えば、以下の問いです。

「たろう君が10回中4回成功できる確率はどのくらいでしょうか?」

これはグラフから読み取れます。算数の勉強ですね^^

答えは「大体10%くらい」です。つまり、「100回やったら10回くらい(10%くらい)は、10回中4回成功」ということです。
「10回中4回成功できる」ですから、横軸の4のところから青いグラフの線まで縦に矢印をひいて、交わったところで横に矢印をひいたところが、大体の確率になります。

はなこさん

はなこさんの、「それぞれの成功回数がどのくらい出やすいか」を表したグラフを以下に示します。

先ほどのたろう君のグラフとかたちが大きく違いますね。成功回数5や6あたりがとがったようなかたちをしています。
はなこさんのグラフでは、以下のような問いを出します。

「はなこさんが10回中6回成功できる確率はどのくらいでしょうか?」

先ほどのおさらいですね。

答えは「大体40%くらい」です。先ほどと同じように6のところから縦に線を引いて、オレンジ色のグラフの線に交わったところで、横に線をひいたところが大体の確率になります。

結局5回以上成功できる確率は?

何回成功できるかのグラフがわかったところで、例題の問いに近づいていきましょう。

とめけんをクリアできる(10回中5回成功できる)可能性が高いのは、たろう君、はなこのどちらでしょう?

この問いに答えるためには、たろう君とはなこさんはどのくらい10回中5回以上成功できるの?
ということが分かればよいです。これもグラフから大体わかりますね。

たろう君が10回中5回成功できるのはどのくらい?

黄色く塗りつぶしたところが、たろう君が10回中5回以上成功できる確率です。

たろう君 < はなこさん
62%  73%

先ほど上の比較を出しましたが、この黄色く塗りつぶした部分が62%となります。

はなこさんが10回中5回成功できるのはどのくらい?

黄色く塗りつぶしたところが、はなこさんが10回中5回以上成功できる確率です。

たろう君 < はなこさん
62%       73%

先ほど上の比較を出しましたが、この黄色く塗りつぶした部分が73%となります。

ふたりのグラフを重ね合わせてみる

たろう君とはなこさんのグラフを重ね合わせてみます。

このような形となります。たろう君(青色)のグラフのほうがゆるやかで、はなこさん(オレンジ色)のグラフのほうがとがっていることがわかりますね。

それぞれの10回中5回以上成功できる確率(とめけんをクリアできる確率)をグラフで示すと以下のとおりです。

それぞれの10回中5回以上成功できる確率は、以下の色の部分を足し合わせたものです。

うすいむらさき色の部分は同じですから、水色の部分と、オレンジ色の部分のどちらが大きいかを判断すればよいです。

正直なところ10回中5回成功できる確率の”差”は11%(はなこさん73% - たろう君62%)しかないので、わかりづらいかもしれませんが、オレンジ色で囲われているところの大きさのほうが大きいです。
別の表現をすれば、オレンジ色と水色の差が、11%ということにもなります。

例題から言えること ~まとめ~

安定はしていないが多く成功できるたろう君と、多くは成功できないが安定しているはなこさん、
どちらがクリアできる可能性が高いか?

答えは、「爆発力はないものの、安定しているはなこさん」でした。これは“統計学的には”という注意書きがつきます。

実際のけん玉において、「安定している」「安定していない」というのはどういうことなのかを考える必があります。

安定している人、安定していない人の特徴

安定していないって?

たろう君の例は極端な例ですが、1回しかできないときもあれば10回できるときもある、といったように安定していない人は次のような特徴があると考えています。

① どうすればその技をできるかを理解できていない
② 気分の浮き沈みが大きい
③ 体力がない

① どうすればその技をできるかを理解できていない

子供の方にありがちな特徴です。例えばとめけんの場合は、「しっかりとひざを使って体ごと沈んでから玉を上げる」といったように、どんな技にもコツがあります。
また、「なぜひざを使うと成功しやすくなるのか」についてもちゃんとした理由があります。

技のコツをきちんと理解せずに、なんとなくの感覚でやってしまうと安定しません。
感覚だけでやっていると、その感覚がたまたまその日ずれてしまったときに修正できないからです。
「いつもはうまくできているのに今日はうまくできない」ということは本当によくあります。なんか調子悪いな~とか、いつもはうまく決まるのに…なんていろんな技が出てくる検定や大会では普通にあります。

そんな場面が実際におきたときに、なんとなくの感覚でやりつづけてきた人は解決することが難しいです。なんとなく調子悪いままで終わってしまいます。

② 気分の浮き沈みが大きい

これは①と関連しますが、気分の浮き沈みが大きいと安定しません。ちょっと調子が悪いと「なんかダメだなあ」とすぐにあきらめてしまったり、集中してできなくなったりしてしまうと、安定感が生まれません。
先ほども申し上げましたが、調子の悪い日のほうが多いです。すべての技を完ぺきにこなせる日は、1年に1回あるかないかです。検定や大会の日がたまたま完ぺきにこなせる調子MAXの日!なんてことは基本的にありません。
それはあなただけではなく、みんなそうです。

相手の調子を自分が把握することはできませんが、自分の調子は自分でわかります。だから自分だけが調子悪いんじゃないかと思って実力を発揮できない人がいます。

「みんなの調子が完ぺきなわけないし、自分も完ぺきではないけど、できる限りのことはやろう」、という気持ちで臨む必要があります。そうしないとすぐに検定や大会の緊張した雰囲気にのまれてしまいます。

③ 体力がない

①や②に比べると影響は小さいと思いますが、体力がないのも安定しない要因の一つです。
体力がないと後半足が疲れてきます。足が疲れてくると普段と同じフォームでできなくなります。上半身だけで上げようとして重心が高くなり、バランスが悪くなります。
その結果、成功率が下がってしまいます。調子のいい日や前半の技は体力を気にせずにできても、なんとなく調子の悪い日や後半の技は体力の影響が大きくなります。

特に大人の方は、普段の運動不足がたたって体力が低下している人が多いです。体力がないと安定した結果を残すことはできません。

安定しているって?

はなこさんのように毎回同じような結果を残せる安定している人には以下のような特徴があります。

① どうすればその技をできるかを理解できている
② 気分の浮き沈みが小さい
③ 体力がある

先ほどのたろう君の特徴とまったく逆の特徴ですね。

① どうすればその技をできるかを理解できている

どうすればその技をできるか、つまり技のコツを理解できている人は、結果が安定します。
なぜなら、失敗したときに修正できるから。
検定や大会で技を失敗したときに、「今のは足を使えていなかったな」とか、「ひもがねじれていると成功できないんだったな」とか、そういうことを意識して修正することができます。

そうするとミスは1度だけで済みます。つまり、最小限のミスで済むということ。検定は100点を取る必要はありません。10回中3回とか、5回とかでいい技がほとんどです。100点、10回中10回成功は求められていません。
つまり、ミスしても修正できればいいんです。

でも修正するためには、その技を理解しておく必要があります。どうやったらできるか、逆に言えばどうやったからミスしたのか、というのをその場その場で発見することは難しいです。普段の練習から、「こうやったらうまくいく」「こうやったら失敗しやすい」ということを理解しておく必要があります。

しっかりと理解できている人は、ミスしても焦りませんし、多少調子が悪くてもリカバリーすることができます。だから回数が安定します。
そして、その安定は、せいぜい10回中3回や5回くらいできればいい検定では力を発揮します。

ちなみに「理解できている」とは、「ほかの人に説明できて納得してもらえる」レベルです。
自分にしか理解できていないと、結局「感覚で」やっているということだからです。
「こうすればうまくできる」というのをほかの人に説明できて初めて、その技を「理解した」ということになります。

② 気分の浮き沈みが小さい

これは①と関連しますが、安定している人はミスしても次のことを考えられます。
「ミスした原因は〇〇だから、次は△△しよう」とか、「今日は調子があまりよくないけど、普段どおりやれば成功できるから、切りかえよう」といったように、ミスを引きずりません。

気分の沈みがない分、安定します。例えば準初段の検定だともしかめを除いて8種類も技をやる必要があります。初段は10種類です。これだけ技の種類が多ければ、調子の悪い技があったり、最初れんぞくでミスしてピンチになる技が出てきます。

それでもあきらめることなく、切りかえられる心の強さがあれば、結果は必ずついてきます。

③ 体力がある

これは大事です。けん玉が体を動かす競技である以上、体力は非常に重要です。特に足の強さ。

検定や大会の後半になると、足が疲れてきます。足が疲れてくると、普段と同じフォームでできなくなっていきます。しかし体力があれば、後半でも同じフォームを維持できます。同じフォームを維持できれば、普段の練習どおりのフォームでできるといういことですから、成功率も落ちません。だから安定します。

また、最後にひざを使って大きくしゃがんで無理やり玉をけんにさす、という場面だってあります。きれいなフォームを維持することも大切ですが、ここぞの場面でフォームが崩れてしまっても、入れることのできる足の強さが必要になることもあります。そういうミスするかミスしないかの場面を足の強さで成功させることができれば、成功率はコンスタントに上がっていきます。

安定している人と、安定しない人の違いは?

技のコツ…とは、つまり技術のことです。
気分の浮き沈み…とは、つまり心のことです。
体力が…とは、つまり体のことです。

これらの心・技・体がすべて備わると、安定が生まれます。そして、安定している人は強いですし、結果が残せます。
何から始めても構いません。けん玉をやる中でいろいろな気づきが得られれば、それに越したことはありません。何かに気づくことができれば面白いし、楽しいし、飽きないです。

今回は数学的(統計学的)なお話から、安定している、ということはどういうことかに話を広げてお話ししました。
数学が難しくてわからない、という方は後半の安定している・していないについてのお話を読んでいただければ十分です。引き続きけん玉を楽しくやっていきましょう!